家電レビュー

日立のドラム式は乾燥フィルターなし! 「らくメンテ」がラクすぎた【ドラム式4連続レビュー】

日立グローバルライフソリューションズ「ビッグドラム BD-STX120H」を1カ月間使ってみました

12月から始まった最新ドラム式4機種連続レビュー。1回目の前回は、東芝ライフスタイル「ZABOON TW-127XP2」をレビューしました。振り返れば、ウルトラファインバブルの洗浄力もさることながら、ドラムが大きくて出し入れしやすい、カラッと乾燥する、ニーズに応じたコースがあるなど、困りごとをほとんど感じさせなかった印象ですが、2回目となる今回はどうでしょうか。

今回、試用したのは日立グローバルライフソリューションズのドラム式洗濯乾燥機「ビッグドラム BD-STX120H」(以下、ビッグドラム)。洗濯容量12kg/乾燥容量6kgで、カラーはホワイトのみ。実売価格は34万円前後。

まずは搬入、設置から。東芝の搬入・搬出時同様、念のため洗面室入り口の扉を外したので、スムーズに設置できました。そして防水パンに乗せたところ、前に比べてずいぶんスッキリした印象。

東芝ZABOONのサイズが、645×720×1,060mm(幅×奥行き×高さ)であるのに対し、日立ビッグドラムは、630×716×1,065mm(同)で、数字上でも微妙にコンパクトですが、足元が少し内側にラウンドしていること、カラーがホワイトであることも、スッキリ見える要因かもしれません。

以前に比べて防水パンにも余裕があるように見え、窮屈な印象がありません

なお今回も在庫の都合で、扉は左開きでしたが、左からアプローチするわが家の動線の場合、右開きが適していると思われます。

左開きだと、出し入れ時にお風呂側に回らないといけないので、少々面倒です

乾燥フィルターがない! 「らくメンテ」でお手入れの手間が激減

CMでも話題の「乾燥フィルターなくしちゃいました」。これでどれほどラクになるでしょうか(出典:日立グローバルライフソリューションズ)

今回試用したビッグドラム最大の特徴といえば、やはり「らくメンテ」でしょう。ドラム式洗濯乾燥機には、衣類から出てくるホコリや糸くずをキャッチする「乾燥フィルター」がありますが、溜まったホコリはこまめに取り除かないと乾燥性能が落ち、乾燥ダクトが詰まる可能性があります。

またドラム内でジャブジャブ洗濯していると、ドアパッキンの裏側にもホコリや糸くずが溜まるため、ここもこまめなお手入れが必要です。そのため、「ドラム式はラクだけど、お手入れが面倒なのが難」という声が意外に多いのです。

そこで日立が採用したのが、お手入れの手間を軽減する「らくメンテ」システム。なんと、乾燥フィルターをなくしてしまったのです。えっ? なくてもよかったの? と思った人も多いと思いますが、出てきたホコリや糸くずは、「洗濯槽自動おそうじ」「乾燥ダクト自動おそうじ」「ドアパッキン自動おそうじ」で、すっかり洗い流してしまうんだそう。

本来、天面の右側には乾燥フィルターが搭載されているのが、本モデルにはありません(左側は液体洗剤・柔軟剤自動投入タンク)

そして最終的には、本体下部の「糸くずフィルター」に溜まるため、基本的なお手入れは月1回、糸くずフィルターのお手入れをするだけ。毎日行なっていた手間がゼロになるとは驚きですが、とりあえず1カ月後を楽しみにしつつ、使ってみることにしましょう。

便利な洗剤自動投入は、設定を忘れずに

従来からある機能で、洗濯の手間をラクにしてくれたものといえば、やはり「液体洗剤・柔軟剤自動投入」でしょう。最近は、ずいぶん多くの洗濯機に採用されていますが、初めて使ったときの快適さと言ったら。何しろあらかじめ洗剤と柔軟剤を入れておけば、「洗剤を取り出す」「フタを開ける」「洗剤量を確認する」「計量する」「投入する」「フタを閉める」「元に戻す」という一連の手間が省けるのですから。

ちなみに本機のタンク容量は、洗剤用が1,000ml、柔軟剤用が700mlと他メーカーよりたっぷり入るため、補充の頻度が減らせるのも個人的にはラクポイントです。

洗剤タンクの注ぎ口も大きいので、詰め替えパックから注ぎやすいです

ところで先日、こんな驚きの話を聞きました。ある人が初めて自動投入タイプを購入し、タンクに洗剤と柔軟剤を入れて使い始めたのですが、しばらくしてタンクを見たら、洗剤が一切減っていない。なんと洗濯機が、自動投入する設定になっていなかったのです。つまり今まで、洗剤も柔軟剤もなしで、洗濯し続けていたという……。確かに、まさか自動投入の設定がオフになっているとは、思わない人もいるでしょう。なお、今回使ったビッグドラムは工場出荷時はオフ設定とのことなので、使用前にしっかり確認しましょう。

使い始めは洗剤の投入だけでなく、自動投入設定も必ずチェック!

なお設定時は、水30Lあたりに何mlの洗剤を投入するか、洗剤量の設定を行なう必要がありますが、スマートフォンのアプリ「洗濯コンシェルジュ」と連携すれば、洗剤の銘柄を設定するだけで、それに適した洗剤量が自動で設定されます。

パワフルなナイアガラ洗浄とAIお洗濯で汚れ落ちに満足

ではさっそく洗濯物を投入。洗濯容量12kgですが、乾燥容量は6kgなので、入れすぎに気をつけなければいけません。6kgと言われても分かりにくいですが、取扱説明書を読んだところ、洗濯物を押し込まずに入れて、左右上側のネジのあたりまでの量が目安だそう。ただ間違った使い方をする人も多そうなので、明確な目印があるとありがたいですね。

ドラム投入口の上側左右のネジあたりが6kgの目安。ただのネジなので、そこが目安とは分かりませんね

さらにいろいろ設定していると、「AIお洗濯」機能も、設定しないと稼働しないことがわかりました。「AIお洗濯」とは、センサーが布量、水硬度、水温、洗剤(液体か粉か)、布動き、汚れの量、布質、すすぎ具合、脱水具合を検知し、細かい設定をしなくても洗い方や時間を自動で判断してくれるもの。これもせっかくの便利な機能、設定し忘れていたらもったいない!

操作パネル上に「AI」とあるので、ここから設定します。なお洗濯乾燥の回数や時間を変更すると、自動で解除されることも

ここで「洗濯・乾燥」の「標準コース」を設定したところ、運転時間は4時間27分と表示され、スタート。洗濯時、東芝は大量の泡が出ていましたが、今回はそこまでアワアワになっている感じはありません。一方で、ジャブジャブと水を流しながら、洗濯物を持ち上げ、落として叩き洗いしている様子が確認できます。

衣類を持ち上げて落とす叩き洗いでしっかり洗浄します

実際の汚れ落ち具合はというと、1カ月の使用で汚れやニオイが気になったことは一度もありません。試しに食べこぼしをイメージした調味料や口紅を布につけて洗ったところ、口紅以外は跡形もなく落ちていました。なお口紅は、以前のレビューで洗濯機だけでは落ちないことがわかったのですが(笑)、前回もつけたので念のため。

よく食べこぼして、「あー!」と言いながら拭き取りがちな調味料などを付着させました
普通に洗っただけでもこの通り。さらに頑固な汚れには温水コースなど、さまざまなコースも用意しています

また運転音についても、日中家で使っている間、音が気になったことはほとんどありませんでした。たまに脱水時の傾きでガタガタいうぐらいで、特に運転時間が長い乾燥運転が気にならなかったのは安心ポイント。より静かに運転する「ナイトモード」も備えているので、夜中に洗濯乾燥して、朝畳むといった使い方もできました。

湿度センサーが乾きすぎを抑え、しっとりした仕上がり

一方の乾燥具合はというと、東芝との歴然とした違いにビックリ! 東芝がカラカラに乾燥され、少し熱いぐらいであったのに対し、日立ビッグドラムは、温度が低く、少ししっとりした感覚があります。もちろんしっかり乾いていますが。やはり乾燥方式の違いでしょうか。

タオルはふんわり乾燥されました。カラッというよりやわらかい印象

ビッグドラムは本モデルから乾燥機能「風アイロン」を進化させ、温度センサーだけでなく湿度センサーも搭載。生乾きはもちろん、乾き過ぎも抑えることが可能になったそうなので、これが乾燥具合の大きな違いに現れているのかもしれません。

ちなみに「風アイロン」とは、大容量のビッグドラムの中で衣類を大きく舞い上げながら、時速約300kmの高速風を吹きかけてシワを伸ばす日立独自の乾燥方式。おかげで、全体的にはシワは少ない印象でしたが、綿素材などは特にシワになりやすい傾向にありました。シワになりやすい服は、洗濯物量を減らして乾燥させるか、洗濯のみにするなど使い分けるといいかもしれません。

モノによっては、強いシワがつくこともありました

前回シワになった洋服を、今度は洗濯物量を減らして洗濯乾燥してみたところ、シワはだいぶ低減しました。でも、そのままで着るには少し厳しいレベルです。

コットンのシャツは、洗濯でもシワになりやすい傾向にありますね

そこでビッグドラムのウリ機能である「スチームアイロン」を試してみました。乾燥した衣類に使うもので、ドラム中を高湿にし、高速風でシワを伸ばしてニオイを取り除くもの。これによって、そのまま着られるまでシワを伸ばすことができました!

思ったよりきれいな仕上がりに! これなら問題ありません

ただし、先ほどのジーンズのシワは、そのまま着られるほどにはならず、結局アイロンがけして着用しました。

なお風アイロンは低温仕上げのためか、1カ月の使用を通して衣類が縮んだと感じることはなかったので、そこも安心ポイントかもしれません。

1カ月お手入れしなかったが……「らくメンテ」がラクすぎた!

このように1カ月使い続け、いよいよ「糸くずフィルター」のお手入れをしてみることに。引き抜いてみると……うわっ! めっちゃ溜まってる! これはすごい。確かに洗濯機中のホコリや糸くずをかき集めてきた感があります。これを月1回捨てればいいだけなんて、すごいラク!

想像以上に溜まっていましたが、ちゃんと集めてきてくれた安心感もあります

ではドアパッキンの裏はどうでしょうか。ぐるりと拭きあげてみたところ、ホコリは出てきたものの、こちらも1カ月放置したものとは思えません。通常、2~3日でこれぐらい出てくるので、間違いなく自動おそうじ効果が出ているようです。

ドアパッキンの裏側をぐるりと一周してみましたが、想像以上にホコリが少ないです

ドラム式洗濯乾燥機のメリットは、洗濯の手間を大幅に省けることなので、洗濯の都度行なわなければいけなかった手間がさらに減るのはありがたいですね。以前は「フィルター掃除ぐらい」と思っていましたが、その手間がなくなると、意外と面倒だったことに気付かされます。

ちなみに、本機の後に別メーカーのドラム式を使い始めたのですが、お手入れをしないことに慣れてしまったせいか、ついフィルター掃除を忘れてしまって大変でした。人はラクな方に慣れるのも早いですね(笑)。

一方使いやすさに関して気になったのは、液晶パネルが直感的に操作しづらいと感じることがあった点です。「えっと、次はどうすればいいんだ?」と指が泳いだり、多彩なコースがあるのに気づかなかったりしたので、せっかくの多機能を余すことなく使いこなせるように表示されるといいと思いました。

「ホーム」ボタン、「戻る」ボタンを使うときは頭で考えなければならず、スタートボタンは操作パネルにないので、一瞬探してしまいます

また風アイロンはヒーター式なので、乾燥時の電気代がヒートポンプ式に比べて高くなるのも要注意です。

低温乾燥で音も静か、やさしい洗濯ライフを求める人に

1カ月試用してみた日立ビッグドラムの印象は、「やさしい」「寄り添う」というイメージでした。まず見た目は主張が少なく、インテリアに違和感なくなじみます。運転音も気にならないし、AIでさりげなくサポートしながら汚れをしっかり落としつつ、低温でやさしく乾燥してくれます。

お手入れの手間が激減したのも、忙しい毎日に寄り添ってくれると感じた大きなポイントでした。何しろユーザーがここまでお手入れしなくていいのは、代わりに洗濯機がせっせと自動でしてくれているわけですから。

というわけで本機は、今まで乾燥フィルターのお手入れを面倒に感じていた人、衣類を低温でやさしく乾燥させたい人に喜ばれる1台と言えるのではないでしょうか。

田中 真紀子

家電を生活者目線で分析、執筆やメディア出演を行なう白物・美容家電ライター。日常生活でも常に最新家電を使用し、そのレビューを発信している。専門家として取材やメーカーのコンサルタントに応じることも多数。夫、息子(高校生)、犬(チワプ―)の3人と1匹暮らし。